朝ドラ『半分、青い』にみる開発プロセス

2018年度上期放送のNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い』

物語も終盤を迎え、漫画家を目指して上京したヒロインがさまざまな経験を経て、「おひとりさまメイカー」として新型扇風機の開発に至るエピソードが描かています。

実在する新興家電メーカー『バルミューダ』のGreenFan開発の実話を原案にしているためドラマのストーリーにも説得力があります。

実際の製品開発では目的やビジョンがブレてしまったり、要求と設計が混在してしまい、無駄な手戻り作業や混乱が生じることがままあります。

『半分、青い』では「目的・ビジョン」から「設計」までの開発プロセスが綺麗にまとまっていたので私なりに書き出してみました。

 

1. 目的・ビジョン

  • 製品を使った人に喜んで欲しい。
  • 入院する母親に病室の中でも優しいそよ風を感じて欲しい。

ここは簡単にぶれてはダメな部分ですね。ここがぶれたとしても一度くらいは紛れ当たりするかもしれません。しかし継続は難しいでしょうね。

2. 要求

  • 自然に近い風を送ることができる

目的やビジョンだけでは漠然としていて製品やサービスの形になりません。目的やビジョンから一歩踏み込んだ具体的な要求が必要となります。但し、要求プロセスでは製品やサービスを届けるユーザーに理解できる言葉で語る必要があります。

3. 要件

  • 風が渦を巻いていない

要求から一歩踏み込んで検証可能な形式でまとめる必要があります。要件プロセスで初めて技術的な用語が登場します。ドラマの中では扇風機の風を煙で可視化したり、屋上で自然の風を測定したりしていましたね。

4. 基本設計

  • 基本設計案1: 回転羽で発生させた風を壁(タライ)にぶつけて渦を壊す
  • 基本設計案2: 回転羽の外周と内周で発生させる風の速度を変えて渦を壊す
  • 要件に対して設計(実現方法)は複数考えられます。ドラマの中でも基本設計案1で試作してみたものの期待通りの結果とならなかったために、基本設計案2に進化しています。

    5. 詳細設計

    • 詳細設計案2−1 回転羽の外周と内周の大きさや角度を変えて工夫する
    • 詳細設計案2−2 ブラシレスDCモータを使い低速で羽を回転させる

    エンジニアとして一番楽しいプロセスはここ? 一方で「ブラシレスDCモータをつかう!」ということを、「手段(設計)」ではなく、「目的」や「要件」と取り違えてしまう過ちをエンジニアは犯しがちです。ブラシレスDCモータを使ってみたものの、さてどうやって制御しよう??? 試行錯誤で制御らしきことをしてみたものの、その制御方法が正しいのか間違っているのか判断できないまま迷走していく… 「渦を壊す」、「自然に近い風」という上流プロセスに常に立ち戻れるように整理しておく必要があります。

    以上、秋風ロスのソフトウェアエンジニアでした。