ちはやふる日記


造形集団海洋堂の軌跡

2006年04月17日 12:16更新

3月8日から5月7日の予定で松本市美術館で開催されている美術展「造形集団 海洋堂の軌跡」を見学してきました。

食玩(一個150円から200円位の「おまけ」つきのお菓子)で一世を風靡した海洋堂の作品展です。

松本市美術館に関しては、計画段階から豪華な箱物施設の建設に賛否両論あったのですが、ことここに至って、原価数十円のお菓子のおまけを展示するのはどうなの?と心配ではありますが、吹き抜けの大きなガラス張りの壁面に作り付けで設けられた小さなショーケースに指先ほどの大きさの海洋堂のおまけが展示され、その向こう側に芝生のきれいな緑が広がっている風景は、なかなかにシュールではありました。

同時開催の海洋堂代表取締役社長 宮脇修一さんの講演会も聴講したのですが本当に面白いお話でした。海洋堂の歴史を辿った当時の写真をプロジェクタで映し出しながら、ほとんど2時間ノンストップで宮脇さんが一人で バラモンやレッドキング、バルタン星人の造形のすばらしさを熱く語られました。

海洋堂の製品というと、造形師、原型師と呼ばれる職人さんを前面に押し出し作家性の高い会社だと思っていましたが、宮脇さんの講演の冒頭の「良いものさえ作っていれば良しとする孤高のものづくりをしてきた人達が必ずしも世間から評価されず名前を忘れ去られている例を知っています。ちょっとした工夫で世の中に受け入れられる、自分をアピールできるビジネスモデルのようなものを、この講演で知ってもらえればと思います」という言葉にガツンとやられました。

しかし宮脇さんの講演を聞いて感じたのは、ビジネスモデルやソロバン勘定はあくまで好きなこと、やりたいことを実現するための手段だということ。

例えば、大林宣彦さんの「さびしんぼう」を見て、主演の富田靖子さんの ファンになったそうです。(私は新尾道三部作の「ふたり」のほうが 好きですが・・・)ファンになったら等身大の富田靖子さんのフィギュアを 作成しました。それで尾道の記念館に展示してもらえるように仕事を取ってきました。結果として、富田さんと対談したり、一緒にラジオに出ることができました。というエピソードが語られました。まさにやったもの勝ちの世界。

もう一つのエピソードは大阪万博をテーマにミニフィギュアを作ったエピソード。

万博は昔から作りたかったテーマだったそうです。だからチョコエッグ(食玩)の成功を足がかりに、お役所である万博協会を動かしました。パビリオンを作った松下電器や施工者の大林組にも出向いて著作権使用許諾の交渉しました。という話がありました。これも初めにビジネスありき、というよりも、やりたいことがあって、あとからビジネスがついてきました、という例でしょう。

講演の締め括りに、お子さんを連れたお母さんから、「なぜあんなに安価な価格で、精密なフィギュアを作って売ることができるのですか?」という質問が出ましたが、宮脇さんから中国の安価な労働力に頼った人海戦術の分業により一切機械を使用せずに製造している舞台裏が説明されました。

宮脇さんの関心が造形の世界だけに向かっているのではなく、中国ビジネスや、その先のアメリカ市場にも向けられていることに感嘆しました。



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